フィリピンのP-POPグループ「SB19」のメンバーであるKen Suson(ケン・スソン)、別名Felip(フェリップ)は、自身のルーツであるビサヤ文化の音楽を世界に広める夢を抱いている。彼はパガディアン市出身で、質素な暮らしを送りながらも音楽への情熱を持ち続けてきたという。
幼少期の苦労と家族の支え
フィリピンの女優、メライ・カンティベロス(Melai Cantiveros)のトークショー「Kuan On One」に出演したFelipは、祖父母に育てられた幼少期を振り返った。
「私は山の中で育ちました。周囲は山ばかりで、道路は舗装されておらず、電波もWi-Fiもない環境でした」
彼の両親は生計を立てるために海外で働いていたため、祖父母が彼と兄弟を育てたという。
「私は末っ子でした。両親は仕事のため遠くに行かざるを得ず、私たちは祖父母に育てられました。高校生の頃のお小遣いはわずか5ペソ(日本円で約13円)でした。学校には徒歩で通い、履いていたのはサンダル。靴を持っていませんでした。休み時間にはバナナキュー(砂糖で揚げたバナナ)やアイスキャンディーを食べるのが楽しみでした」
音楽の道を目指してマニラへ
高校卒業後、Felipは音楽の道を志し、マニラへと向かった。しかし、所持金はわずか1,500ペソ(日本円で約4,000円)で、それも叔母から借りたものだった。
「祖父母は反対しませんでしたが、最初は家族全員に内緒にしていました。両親が私が大学を中退したことを知ったとき、激怒し、2年間も話をしてくれませんでした」
それでも彼は音楽への情熱を貫いた。
「自分の才能を信じていました。幼い頃から教会の音楽に触れ、楽器を演奏したり歌ったりしていました。これは一生に一度のチャンスだと思ったのです」
夢の実現と家族との和解
努力の末、FelipはSB19のメンバーとして成功を収め、最終的に両親とも和解した。
「トレーニングを重ね、ついに成功を収めたとき、両親も受け入れてくれました。父は私たちの成功を祈ってくれていました」
ソロ活動とビサヤ語音楽へのこだわり
SB19のKenとしての活動と、Felipとしてのソロ活動について、彼は次のように語る。
「仕事の姿勢や努力は変わりませんが、ソロでは自由に表現できます。SB19ではグループの一員としての役割がありますが、ソロのときは全力でやりたいことができます」
また、彼は音楽において自身のルーツを大切にしているという。
「最近リリースした『Kanako』はビサヤ語と英語の歌詞が混ざった曲です。個人的には、ビサヤ語の楽曲をもっと作りたい。ビサヤ語はとても美しく、世界に広めたいと思っています」
SB19のデビューから7年が経ち、Felipは自身の成長についてこう振り返る。
「辛抱強くなることを学びました。そして、どんなに小さな成功でも感謝することの大切さに気づきました。時には大きな成功ばかりを求めてしまいますが、原点を忘れずにいたいと思います」
今後もFelipは、ビサヤ文化を音楽に取り入れながら、自らのアイデンティティを世界へと発信し続けるだろう。