防衛省は24日、陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を発足させた。司令部は東京・市ヶ谷の防衛省内に設置され、約240人の体制で運用を開始した。統合作戦司令部の設置により、迅速な部隊運用やアメリカ軍との連携強化が期待される。
統合作戦司令部のトップには、南雲憲一郎空将(59)が統合作戦司令官として就任した。これにより、従来は統合幕僚長が担っていた部隊指揮の役割が統合作戦司令官に移行し、統合幕僚長は防衛大臣の補佐や省内調整に専念する形となる。
統合作戦司令部の役割と背景
統合作戦司令部の設置により、陸海空自衛隊に加え、宇宙・サイバー領域の部隊も一元的に統制されることになる。統合作戦司令官は、防衛大臣の命令や統合幕僚長の指示を受け、各自衛隊の司令官を通じて部隊を指揮する。
従来、自衛隊は陸上自衛隊の朝霞駐屯地、海上自衛隊の横須賀基地、航空自衛隊の横田基地といった異なる拠点に司令部を置いていた。大規模災害や国外の紛争時には、統合部隊が臨時で編成され、指揮官も都度異なっていた。しかし、今回の改編により、平時から有事まで一貫した指揮が可能となる。
防衛省は、統合作戦司令部の常設により、迅速かつ柔軟な対応を可能にし、統合運用の実効性を高める狙いがあるとしている。
東日本大震災が設置の契機に
統合作戦司令部設置の背景には、2011年の東日本大震災がある。当時、自衛隊制服組トップの統合幕僚長が部隊指揮と政府への対応の両方を担い、負担が集中したことが課題とされた。この経験を踏まえ、指揮と戦略立案の役割分担を明確にするため、統合作戦司令部が設置された。
統合作戦司令官の権限は広範囲に及び、警戒監視、災害派遣、弾道ミサイル対処、在外邦人保護、有事の際の防衛任務などを担当する。また、統合作戦司令官の階級は、統合幕僚長や各自衛隊の幕僚長と同等とされている。
統合作戦司令部は2025年度末までに280人体制への拡充が予定されている。
在日アメリカ軍の「統合軍司令部」設置計画
自衛隊の統合作戦司令部の発足に伴い、アメリカ軍も在日米軍の指揮体制を見直し、「統合軍司令部」を設置する方針を示している。
現在、在日アメリカ軍の指揮権は東京の横田基地ではなく、ハワイのインド太平洋軍司令部が持っている。しかし、ハワイと日本の距離や時差の問題から、有事の際の迅速な連携が課題とされてきた。こうした背景から、在日アメリカ軍の指揮・統制の権限強化が求められ、統合軍司令部の設置が計画されている。
在日アメリカ軍は、「統合軍司令部」の司令官には中将が就任する予定であり、再編計画は順調に進んでいるとコメントしている。しかし、アメリカ国内では、国防総省が在日米軍の強化計画を見直す可能性も指摘されており、今後の動向が注目される。
今後の課題と展望は
統合作戦司令部の設置は、日本の安全保障体制の強化に向けた大きな一歩となる。一方で、アメリカ軍との連携が強まることで、日本の指揮権の独立性がどのように担保されるのかという課題も残る。
また、2024年7月には在日アメリカ軍の「統合軍司令部」が発足する予定だが、アメリカ国内の政権交代などにより計画が変更される可能性もある。日米の防衛協力のあり方について、引き続き注視する必要がある。