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天皇皇后両陛下、戦後80年で硫黄島訪問 戦没者を慰霊

戦後80年、太平洋戦争の激戦地を訪問

天皇皇后両陛下は、戦後80年の節目にあたり、太平洋戦争の戦没者を慰霊するため、2025年4月7日午前、東京都の羽田空港を出発し、小笠原諸島の硫黄島へ向かわれた。両陛下の硫黄島訪問は今回が初めてとなる。

出発は午前10時過ぎで、政府専用機によりおよそ1200キロ離れた硫黄島へ向かわれた。硫黄島は太平洋戦争末期の昭和20年、日米両軍による激しい地上戦が行われ、約2万9000人が戦死した激戦地として知られている。

戦没者慰霊碑での献花と拝礼

両陛下は現地にて、旧日本軍の戦没者の慰霊碑、さらに日米両軍の犠牲者を悼む慰霊碑に花を供え、水をかけて慰霊された。水の供えは、火山島の過酷な環境下で飢えと渇きに苦しみながら亡くなった兵士たちの霊を慰める意味が込められている。

この地には、戦後50年を翌年に控えた平成6年(1994年)に上皇ご夫妻が訪問された歴史があるが、天皇皇后両陛下にとっては今回が初の訪問となる。

島民や遺族の慰霊にも

硫黄島では戦時中、多くの島民が強制的に疎開させられたが、一部の男性約100人が軍属として残り、守備隊とともに戦った。両陛下は、戦闘で命を落とした島民らの慰霊塔がある墓地公園にも赴き、花を供え拝礼された。

さらに、自衛隊基地では日本側の戦没者の遺族や元島民の子孫らと懇談し、慰霊の意を表されたのち、夜には皇居へ戻られる予定である。

全国の慰霊地巡りの第一歩

2025年は戦後80年にあたる節目の年であり、両陛下は今後も広島、長崎、沖縄など、太平洋戦争の象徴的な地を訪問し、慰霊を続けられる予定である。今回の硫黄島訪問は、その第一歩として位置づけられている。

遺族の思い「戦争をしてはいけないと伝えたい」

今回の訪問に対し、遺族らも特別な思いを抱いている。東京都昭島市在住の栗林快枝さん(66)は、硫黄島守備隊を率いた陸軍中将・栗林忠道の孫である。

栗林中将は昭和19年6月から硫黄島に赴任し、昭和20年3月に戦死するまで島を離れることなく戦った。その間に本土の家族へ送り続けた41通の手紙には、過酷な生活環境や、部下とともに生還を期さず戦う決意、そして残される家族への思いが綴られている。

快枝さんは、祖母と父が戦争について多くを語らなかったことを思い返しながら、「遺骨も戻らないというのは、2重3重につらいことだったと思います。滑走路の下にある遺骨をどうするかなど課題はありますが、1人でも多くの遺骨が本土に戻ってきてほしいと願っています」と語った。

さらに両陛下の訪問については、「英霊の皆さんが安らかにお眠りいただけるよう、心から祈っていただけることに感謝しています。戦争は絶対にしてはいけないということを、戦争を知らない世代にしっかり伝えていかなければならない」と話している。