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「映画館の素晴らしさを忘れたくない」 — 吉永小百合が丸の内TOEI最終上映で感謝、65年の歴史に幕を下ろした銀座の名画座

東京・銀座に1960年9月20日に開業した映画館「丸の内TOEI」が、2025年7月27日、東映会館の再開発に伴い閉館した。東映最後の直営館として65年にわたり映画ファンに愛された劇場は、最終上映作品『動乱 第1部 海峡を渡る愛/第2部 雪降り止まず』(1980年、森谷司郎監督)の上映を終え、歴史にピリオドを打った。閉館プロジェクト「さよなら丸の内TOEI」は5月9日から80日間で100作超の名作を上映し、4万6120人を動員、興行収入7761万8400円を記録した。

吉永小百合、最終上映にサプライズ登壇

閉館日の27日、俳優・吉永小百合が最終上映前にサプライズで登壇し、観客から驚きと歓声が上がった。吉永は『動乱』をはじめ、昭和・平成・令和の三時代にわたり東映映画20作品に出演。劇場への深い思い入れを込め、「皆様、今日は丸の内TOEIの最後の日にこんなにたくさんいらしていただき本当にありがとうございます。この劇場で働かれた方々に心からお礼を申し上げます」と感謝を述べた。

『動乱』上映と観客の拍手

最終上映の『動乱』は、昭和史の転換点を背景に高倉健と吉永の共演で描かれた超大作。午後7時20分頃の上映終了後、館内からは拍手が沸き起こった。吉永は「この『動乱』の初日、1980年1月15日に初めてここでご挨拶しました。映画づくりの素晴らしさを感じた大切な作品です」と振り返り、撮影時の思い出や高倉健とのエピソードを語った。また、コロナ禍で公開延期となった『いのちの停車場』(2021年)など、丸の内TOEIでの上映挨拶を振り返り、「素敵な劇場でしたし、なくなってしまうことはつらい」と惜しんだ。

東映社長の挨拶と劇場の灯りが消える

上映後、東映・吉村文雄社長が観客一人一人に感謝の挨拶を行い、劇場前には約300人が集まった。吉村社長は「丸の内TOEIは閉館しますが、東映はこれからもお客さまを楽しませる作品を作り続けます」と述べ、午後8時8分、劇場の明かりが消えた。観客からは「東映、ありがとう!」の声が響き、1960年の『海賊八幡船』から始まった65年の歴史が締めくくられた。

映画館の価値を訴える吉永の言葉

吉永は最後に、映画館の価値を強調し、「高倉さんも、森谷司郎監督も、岡田裕介プロデューサーも見守ってくださっていると思います。映画館で映画を見る素晴らしさを忘れたくない。皆様にも、また映画館に足をお運びいただければ」と語り、惜しみない拍手を受けた。丸の内TOEIの閉館は、映画ファンにとって一つの時代の終わりを象徴する出来事となった。