8月21日、三重県知事選挙が告示され、現職の無所属一見勝之氏(62歳、自民・立憲・公明・国民推薦)と、新人の無所属伊藤昌志氏(55歳)、無所属石川剛氏(51歳、共産支持)の3名が立候補を届け出た。投票は9月7日に行われる。本記事では、各候補者の第一声演説を基に、主要政策と訴えを整理し、選挙の構図を客観的に解説する。
一見勝之候補:県政の継続と防災・人口減少対策を強調
背景と実績
現職の一見勝之氏は、元国土交通省自動車局長の経歴を持ち、4年間の知事経験を基に県政の継続を訴える。自民党、立憲民主党、公明党、国民民主党の4党から幅広い推薦を受け、組織力を背景に選挙戦を展開する。
演説のポイント
一見氏は津駅前で約4分間の演説を行い、「あいさつ・支援呼びかけ」が44%を占めた。政策面では「人口減少対策」と「南海トラフ対策」を強調。人口減少対策では、令和5年に全国初の人口減少対策方針を策定し、ジェンダーギャップ解消や子育て環境整備を進めてきたと主張。「人口減少は継続している」と危機感を示し、さらなる対策の必要性を訴えた。
防災では、南海トラフ巨大地震への対応を最優先課題とし、知事就任時に未整備だった津波避難タワー18基のうち17基の整備・計画を完了した実績を強調。東海地方初の防災アプリ導入もアピールし、県民の命を守る姿勢を明確にした。また、子ども政策、医療、観光、産業、インフラ整備など幅広い課題に目配りし、「三重県の発展をとどめるわけにはいかない」と意気込みを示した。
政策の焦点
- 人口減少対策:ジェンダーギャップ解消、子育て環境整備の継続。
- 南海トラフ対策:津波避難タワー整備、防災アプリ導入、県庁体制の強化。
- 財政健全化:具体的な言及は少ないが、着実な県政運営を主張。
伊藤昌志候補:メガソーラー反対と減税で変革を訴える
背景と経歴
元四日市市議会議員の伊藤昌志氏は、2019年に市議選で当選後、2024年の衆院選と四日市市長選で落選。完全無所属で知事選に挑む。「普通の国民」を強調し、既存の政党政治や利権構造への批判を基軸に選挙戦を展開する。
演説のポイント
伊藤氏は四日市市で約10分間の演説を行い、「メガソーラー反対」が内容の50%を占めた。「利権政治批判」と「子育て」にも時間を割き、既存政治への不信感を訴えた。与野党相乗りの政治体制を「利権政治」と批判し、県民税や自動車税の減税を公約に掲げる。特にメガソーラーについては、「三重県中に1万箇所以上ある」と主張し、環境破壊や防災力低下のリスクを指摘。自然保護と子どもたちの未来を守るため、県民運動として反対を訴えた。
SNSを活用した発信にも力を入れ、野口健氏やASKA氏からの支持を引用し、ネット上の共感を拡大。「政治に興味がない人にも届く普通の人間の代表」を自任し、県民の声を反映する県政を目指すと述べた。
政策の焦点
- メガソーラー反対:環境破壊と防災リスクを理由に、大規模太陽光発電施設の阻止を最優先。
- 減税:県民税・自動車税の減税、県事業の見直しによる歳出削減。
- 子育て:子どもや孫の未来を守るための政治改革。
石川剛候補:県民目線の県政と災害復興基金を提案
背景と経歴
ブラジル出身で日本国籍を取得した石川剛氏は、津市で建設会社社長を務める。過去に三重県知事選や津市長選で落選したが、共産党の支持を受け再挑戦。実業家としての経験を活かし、県民目線の県政運営を訴える。
演説のポイント
石川氏は津市の県庁前で約11分間の演説を行い、「経歴・政治理念」が42%を占めた。「県政のあり方」と「南海トラフ対策」にも重点を置き、現職の県政運営に「県民への目線が不足している」と批判。県民税廃止や交通網整備による企業誘致を公約に掲げ、財政健全化を目指す。特に、毎年300億円の県債発行をゼロにする目標を明確に示した。
南海トラフ対策では、現在の備蓄品1700品の不足を問題視し、米ドル建ての災害復興基金設立を提案。福島原発復興工事の経験を踏まえ、「壊滅後の復興の大変さ」を強調し、迅速な復興策の必要性を訴えた。また、若者や女性の登用を重視し、副知事に若い女性を起用する構想を発表。県民の声を反映した「伊勢経済フォーラム」の開催も提案し、中小企業経営者との対話を通じて政策を構築する方針を示した。
政策の焦点
- 県民税廃止:税制見直しで経済活性化と人口減少対策。
- 南海トラフ対策:米ドル建て災害復興基金設立、備蓄品の拡充。
- 財政健全化:県債発行ゼロを目指す強力なマネジメント。
選挙の構図と展望
三重県知事選挙は、現職の一見氏が4党の推薦を背景に安定した県政継続を訴える一方、新人の伊藤氏と石川氏が減税や利権政治批判を軸に変革を求める構図である。一見氏は実績と組織力を強みに、人口減少や防災対策の継続を強調。伊藤氏はメガソーラー反対を旗印に無党派層への訴求を狙い、SNSを活用した草の根運動を展開する。石川氏は実業家視点で財政健全化や災害復興を訴え、共産党の支持を背景に独自の政策を打ち出す。
前回知事選の投票率は37.98%と低く、組織票が有利に働く傾向がある。伊藤氏と石川氏は「減税」などの分かりやすい公約で無党派層の投票率向上を狙うが、一見氏の幅広い政党支持が選挙戦をリードする可能性が高い。
まとめ
三重県知事選挙は、人口減少、南海トラフ対策、財政健全化など喫緊の課題に対する各候補者のアプローチが明確に分かれる選挙である。一見氏は実績と安定感、伊藤氏は利権政治批判と環境保護、石川氏は県民目線の改革と災害対策をそれぞれ強調。9月7日の投開票に向け、有権者の選択が三重県の未来を左右する。
注:
メガソーラーに関する伊藤氏の主張については、事実関係の検証が必要な部分があります。
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