保守分裂選挙、新人が現職を破る
沖縄県与那国町で24日、任期満了に伴う町長選が実施され、無所属新人で前町議の上地常夫氏(61)が初当選を果たした。保守系現職の糸数健一氏(72)らを破り、51票差で勝利した。与那国町は台湾まで約110キロに位置する日本最西端の島であり、防衛強化をめぐる姿勢が最大の争点となった。
防衛強化に慎重姿勢
上地氏は保守系でありながら、自衛隊の存在を容認しつつ「機能強化には慎重な判断が必要」と主張。政府の抑止力強化を推進する糸数氏とは一線を画し、是々非々の立場を示した。その結果、一部革新層からの支持を獲得した。
糸数氏はこれまで「一戦交える覚悟なくして国民の命も財産も守れない」と強硬な発言を繰り返し、憲法改正にも前向きだった。しかし今回の選挙では発言が影響し、革新層が離反。支持を広げられず落選となった。
革新系新人の田里千代基氏(67)は自衛隊の増強や有事の避難計画に明確に反対したが、支持拡大には至らなかった。
医療体制の不安も争点に
選挙では地域医療の存続も大きな焦点となった。町の診療所に医師を派遣してきた公益法人が来年3月末で撤退を表明しており、医療空白の懸念が高まっている。さらに、介護施設の撤退や薬局の閉鎖など医療・福祉を巡る課題は深刻化している。
上地氏は当選後、「町民は医師がいなくなることを不安に思っている。医療体制の確立を急ぎたい」と強調した。
自衛隊駐屯地と島の将来
与那国島には平成28年に陸上自衛隊駐屯地が開設され、現在の人口約1650人のうち、自衛隊員とその家族が約2割を占める。駐屯地は過疎対策や地域経済の活性化に一定の役割を果たしてきた一方、台湾有事を見据えた「南西シフト」の要として国防上の位置づけは重い。
新町長となった上地氏が、現職の糸数氏が推し進めてきた防衛路線をどう転換し、政府の安全保障政策にどのように向き合うのか、今後の動向が注目される。