2025年8月8日、茨城県知事選挙が告示され、現職の無所属大井川和彦氏(61歳、自民・維新・国民・公明推薦)と、新人の無所属田中重博氏(78歳、共産推薦、社民支持)、無所属内田正彦氏(51歳)の3名が立候補を届け出た。投票は9月7日に行われる。
本記事では、各候補者の第一声演説と関連情報を基に、政策や争点を整理し、選挙の構図を客観的に解説する。
大井川和彦候補:挑戦と経済成長の継続を強調
背景と実績
現職の大井川和彦氏は、土浦市出身で東京大学法学部卒業後、旧通産省やマイクロソフト、ドワンゴ役員を歴任。2017年に7期目の現職を破り初当選し、2期8年の実績を基に3期目を狙う。自民党、日本維新の会、国民民主党、公明党の推薦を受け、強固な組織力を背景に選挙戦を展開する。
演説のポイント
大井川氏は水戸市で約15分間の演説を行い、「企業誘致や輸出」が35%、「行政改革」が20%を占めた。「挑戦する県政、スピード感と選択集中」を掲げ、8年連続で企業立地件数全国1位、設備投資額1兆円超、農産物輸出24倍増、観光消費額過去最高などの実績を強調。特に、かんしょ農家の所得2.1倍増や茨城空港の制限撤廃をアピールした。
今後は、グローバル企業誘致、つくばエクスプレス(TX)土浦延伸、茨城空港の首都圏第3空港化、水戸医療圏の病院再編、英語で他教科を学ぶ教育導入を推進。「現状維持は最も危険」とし、差別化による地域活性化を訴えた。外国人材受け入れについては、多様な人材の活躍を支援し、日本語教育や相談窓口を充実させる方針を示した。
パワーハラスメント疑惑については、「『死ね』や『このアマ』といった発言の記憶はない」と否定し、全国的なメンタルヘルス問題の一環と説明。県民所得が全国3位に上昇した点を挙げ、経済成長と困窮者支援の両立を目指すと述べた。
政策の焦点
- 経済活性化:グローバル企業誘致、TX延伸、茨城空港強化。
- 行政改革:無駄な県有資産の民間活用、選択と集中による予算配分。
- 多様性支援:外国人材や障害者、性的マイノリティの活躍促進。
- 医療・教育:水戸医療圏の病院再編、英語教育の導入。
田中重博氏:県民優先の県政転換とパワハラ批判
背景と経歴
田中重博氏は大阪府出身で、京都大学大学院博士課程修了後、茨城大学で人文学部長や副学長を歴任。地方自治の専門家として、3度目の知事選挑戦となる。共産党の推薦と社民党の支持を受け、対抗馬として現職批判を展開。
演説のポイント
田中氏は水戸市で約12分間の演説を行い、「パワハラ疑惑」が30%、「現職の姿勢批判」が25%を占めた。大井川県政を「大企業優先のもうけ本位」と批判し、週刊文春報道を引用して職員13人の自殺や110人以上のメンタルヘルス問題を指摘。「大井川帝国」と揶揄されるワンマン体質を変えると訴えた。
政策では、最低賃金1500円の実現、消費税減税、インボイス廃止、農業予算2倍化による所得保障、東海第二原発の廃炉、選定療養費の撤廃を公約。学校給食無償化やコミュニティーバス充実、CO2削減のゼロカーボンシティ宣言も掲げた。常陸那珂港(6800億円)や水戸市民会館(360億円)など大型事業の無駄遣いを批判し、福祉や教育への財源振り向けを主張した。
政策の焦点
- 県政転換:大企業優先から県民の命と暮らし優先へ。
- パワハラ対策:県庁の職場環境改善、自由な発言の確保。
- 経済・福祉:最低賃金1500円、消費税減税、学校給食無償化。
- 原発・環境:東海第二原発廃炉、ゼロカーボンシティ宣言。
内田正彦候補:外国人雇用反対と地域課題への独自提案
背景と経歴
内田正彦氏は東京都出身で坂東市育ち。自衛官や警備会社員を経て、初の知事選挑戦。無所属で「県民ファースト」を掲げ、外国人雇用やメガソーラー問題に独自の視点で挑む。
演説のポイント
内田氏は約5分間の演説で、「県職員の外国人採用反対」が40%を占めた。来年から始まる公務員の国籍条項撤廃に反対し、「公務員になりたい日本人が多い」と主張。メガソーラーについては、食料自給率低下や電気代賦課金の負担増を理由に規制を訴えた。
土葬墓地の新設反対を掲げ、井戸水を使う農家の安全を重視。医師不足解消のため、県立医療大学の設立を文科省・厚労省に要請し、県内定着を促進。県南の人口増加に対応し、つくば市への県立高校新設を提案した。ユニークな公約として、コアラの誘致を挙げた。
政策の焦点
- 外国人雇用反対:県職員の国籍条項維持、不法滞在対策。
- メガソーラー規制:食料自給率向上と電気代負担軽減。
- 医療・教育:県立医療大学設立、つくば市への県立高校新設。
- 地域課題:土葬墓地反対、コアラ誘致。
選挙の構図と争点
主要争点
- 現職の県政評価:大井川氏の2期8年は、企業立地件数全国1位や農産物輸出24倍増など経済成長の実績が際立つ。一方、田中氏はパワハラ疑惑や大企業優先を批判し、県民目線の転換を主張。内田氏は外国人雇用やメガソーラーなど独自の課題を提起。
- パワハラ疑惑:週刊文春が報じた職員13人の自殺や110人以上のメンタルヘルス問題が注目を集める。大井川氏は疑惑を否定し、県の第三者委員会もパワハラを認めなかったが、自民党県連は「穏やかな県庁業務」を政策協定に盛り込んだ。
- 医療・福祉:選定療養費の運用(大井川氏推進、田中氏撤廃)が論戦の中心。医師・看護師不足(全国46位、43位)への対応や学校給食無償化も焦点。
- 経済・環境:大井川氏の企業誘致やTX延伸に対し、田中氏は大型事業の無駄遣いを批判し、農業予算倍増や原発廃炉を主張。内田氏はメガソーラー規制や食料自給率向上を訴える。
選挙戦の展望
前回2021年選挙では、大井川氏が田中氏を4倍近い得票で圧勝。今回も大井川氏が4党推薦の組織力で優位と見られるが、田中氏のパワハラ問題追及や内田氏の独自提案が無党派層にどこまで響くかが焦点。前回投票率は33.94%と低く、組織票が結果を左右する可能性が高い。
まとめ
茨城県知事選挙2025は、大井川氏の経済成長実績と田中氏の県民優先訴求、内田氏の独自政策がぶつかる構図である。パワハラ疑惑、選定療養費、経済活性化、環境対策が主要争点となり、県民の選択が今後の県政の方向性を決定する。9月7日の投開票に向け、各候補の訴えが注目される。
注:
本記事は、提供された演説内容と関連情報を基に構成しています。パワハラ疑惑や自殺者数に関する田中氏の主張は週刊文春報道に基づきますが、大井川氏および県の第三者委員会はパワハラを否定しており、事実関係の検証が必要です。
姉妹サイト「Z STATE」のご紹介
8and…の姉妹サイト「Z STATE」では、どなたでもご参加いただける疑似的な投票サービス、「未成年総選挙」を公開しております。利用料金は一切不要で、年齢や都道府県に関係なく、どなたでもご利用いただけます。
「未成年総選挙」は、以下のような方にオススメです。ぜひご利用ください。
実際の投票所へ行く前に予習しておきたい!
まだ未成年だけど投票してみたい!
他の都道府県の候補者にも票を入れてみたい!
未成年総選挙はこちら