映画「星と月は天の穴」が12月19日より東京・テアトル新宿ほか全国で公開される。原作は吉行淳之介が1966年に発表した同名小説で、脚本・監督を荒井晴彦が務める。主演は綾野剛、共演に咲耶、田中麗奈、柄本佑、岬あかり、MINAMO、宮下順子らが名を連ねる。配給はハピネットファントム・スタジオが担当し、R18+指定作品となる。
物語のあらすじ

物語は、愛に傷つき孤独を抱える40代の小説家・矢添克二(綾野剛)の姿を描く。過去の結婚の失敗から女性との深い関係を避け、娼婦・千枝子(田中麗奈)と体だけの関係を続けながら、執筆する恋愛小説に自身を投影し「精神的な愛」を模索する日々を送る。しかし、画廊で出会った大学生・瀬川紀子(咲耶)との偶然の出来事をきっかけに、克二の心と日常は揺らぎ始める。エロティシズムとペーソスが交錯する中、克二の滑稽で切ない内面が浮き彫りになる。
キャストとスタッフ
主人公・矢添克二を演じる綾野剛は、荒井監督と「花腐し」(2023年)に続くタッグで、複雑な感情を抱える男の色気を体現。紀子役の咲耶は、初々しさと大胆さで物語に新たな風を吹き込む。千枝子役の田中麗奈は、克二との関係性を通じて新境地を開く演技を見せる。そのほか、柄本佑、岬あかり、MINAMO、宮下順子らが脇を固め、濃密な人間ドラマを構築する。撮影は2024年4月に東京近郊で行われた。
コメント
綾野剛(矢添克二役)
「荒井監督の脚本は言葉の美しさと滑稽さ、文学への造詣に満ち、役者として唯一無二の体験だった。台詞を噛みしめ、吐き出す過程で生きた言葉が生まれた。今も武者震いする思いだ。『星と月は天の穴』の言葉の心地をぜひ体感してほしい。」
咲耶(瀬川紀子役)
「純文学の登場人物になる夢が早くも実現した。紀子を演じることはこの上ない幸せだった。本作は現代日本映画に挑むような、美しくユーモラスな観る文学だ。綾野さんや荒井監督との時間は夢のようで、多くの方に観てほしい。」
田中麗奈(千枝子役)
「荒井監督とは過去にもご一緒したが、本作のお声がけは驚きと喜びだった。綾野さんはアイデアを出し合い、監督も楽しむ素晴らしい現場だった。千枝子の背景を丁寧に作り上げたが、彼女を思い出すと今も胸が締め付けられる。挑戦的な作品の反響が楽しみだ。」
荒井晴彦(脚本・監督)
「18歳の時、吉行さんの原作に衝撃を受けた。愛を拒む男が欲望に敗れる物語に惹かれ、いつか映画化したいと思っていた。『精神という花の根っこに性がある』という吉行の言葉を、今回の作品で引き抜きたかった。」