任期満了に伴う宮城県知事選挙は26日投開票され、無所属現職の村井嘉浩氏(65)が、無所属新人の和田政宗氏(51)らを破り、県政史上最多の6選を果たした。村井氏は340,190票を獲得し、和田氏の324,375票に約1万6千票差をつけた。投票率は前回(2021年、衆院選同日投票)の56.29%から9.79ポイント低下した46.50%。当日の有権者は187万2,116人(男性90万4,166人、女性96万7,950人)で、期日前投票が活発だったものの、全体的に低調となった。開票作業は同日深夜に終了し、村井氏の当選確実が報じられた。
立候補者と争点
立候補者は無所属の5人で、村井氏の長期政権評価が最大の争点となった。村井氏は「富県戦略」の継続を掲げ、仙台医療圏の病院再編完結や半導体企業誘致を公約。5期20年の実績をアピールし、自民党・県民会議、公明党、日本維新の会の県議や市町村長、業界団体などの組織票を固めた。一方、和田氏は県政刷新を主張し、個人県民税5%減税や出産育児費無償化を訴え、参政党の全面支援を受けた。政策覚書で水道事業の再公営化や移民政策反対を強調し、神谷宗幣代表が4回も応援演説に駆けつけた。元県議の遊佐美由紀氏(62)は「福祉立県」を掲げ、立憲民主党・共産党の支援を集めたが、埋没した。元角田市職員の伊藤修人氏(33)と自営業の金山屯氏(85)は支持を広げられなかった。
選挙戦の経過
選挙戦は異例の激戦となった。多選批判に加え、SNSでのデマ拡散(例: 「メガソーラー推進」)と誹謗中傷が村井陣営を苦しめ、期日前投票の出口調査では和田氏優勢が報じられた。前半は支持者の表情が硬く、村井氏自身「支持が広がっているのか、見えない」と不安を漏らした。中盤には仙台市内で「売国奴!」との野次を受け、心身を削った。20日には中傷への法的措置を検討表明し、自民党県議らが危機感を共有。最終盤で組織がフル回転し、雨の中の25日演説で「参政党の攻撃に負けない」と反撃。和田氏は仙台市内の全5区で村井氏を上回り、3万票以上の差をつけたが、県北部や沿岸部での村井氏の組織票が勝敗を分けた。
当選の瞬間と村井氏のコメント
26日深夜、当選確実の報に仙台市青葉区の事務所で支持者約200人が手を取り合って喜びを爆発させた。村井氏は笑顔で「支えてくれた皆さんのおかげです。5期20年でやってきたことは間違っていなかった。県民との約束を必ず実現する」と感謝。「本当に苦しい選挙だった」と涙をこらえ、支持者に抱きついた。昔からの支援者は「村井ちゃん、頑張ったな」と労をねぎらい、村井氏は「あと4年で最後。全力でやり切る」と決意を新たにした。27日朝には「初心に返って謙虚にやりたい」と抱負を述べ、孫との時間は「もう少し先に」と語った。村井氏は大阪府出身、防衛大学校卒で、2005年初当選以来連続5期。全国知事会長も務めた実績を持つ。
解説と今後の展望
村井氏の勝利は組織戦の賜物だが、多選の「飽き」とSNSデマの影響が露呈した。河北新報の解説では「油断や慢心が広がっていた。政策集の総花的さや仙台市民の不評が響いた」と指摘。和田氏の善戦は若年層の支持を示すが、参政党の支援が保守分裂を招いた。遊佐氏の立民・共産支援も効果薄く、全体として低投票率が課題だ。村井県政の「集大成」として、人口減少対策や水道民営化の是非が問われる中、丁寧な運営が求められる。




