保守票の分散避けられず
一本化の狙いは食い合い回避
自民党総裁選は5人が立候補する構図が固まりつつある。保守派とされる小林鷹之元経済安全保障担当相と高市早苗前経済安保担当相の「一本化」が不発に終わり、保守票が分散する見通しとなった。両氏は安全保障政策や憲法改正推進、選択的夫婦別姓制度への慎重姿勢などで共通点が多く、一本化がかねてより取り沙汰されていたが、調整は実を結ばなかった。
小林氏は出馬を正式表明
小林氏は16日の記者会見で正式に出馬を表明し、「穏健な保守」を掲げた。一方、高市氏も今週後半に出馬表明を検討している。党内では、萩生田光一元政調会長が小林氏に対し高市氏支持へ回るよう要請したとされるが、小林氏は独自の出馬にこだわったとされる。
両陣営の温度差
高市氏と小林氏が直接交渉を重ねた形跡はなく、両陣営の距離は縮まらなかった。党幹部経験者は「両者の目標が異なり、統合は困難だった」と指摘する。
高市氏陣営には、安倍晋三元首相を支えた保守系議員連盟「創生日本」のメンバーが多く、古屋圭司憲法改正実現本部長や中曽根弘文元外相らが名を連ねる。
これに対し小林氏陣営は、大野敬太郎衆院議員ら当選5回の同期を中心とする勉強会が基盤である。世代交代を志向する議員が多く、保守色の強調よりも新しいリーダー像を重視しているのが特徴だ。
保守票の行方は流動的
仮に小林氏が出馬しなかった場合でも、高市氏を支持せず、小泉進次郎農林水産相を支持する議員が多いとされる。小泉氏は今回、選択的夫婦別姓導入の主張を後退させるなど保守的な姿勢を強めており、創生日本の中心メンバーである加藤勝信財務相を陣営幹部に迎えるなど体制を整えた。
その結果、総裁選は「保守派か否か」という単純な対立軸では語りにくい様相を呈している。