佐賀市長選は10月12日に告示され、無所属現職の坂井英隆氏(45歳、自民・立憲・公明県本部推薦)以外に立候補の届け出がなく、無投票で再選が決定した。佐賀市長選が無投票となるのは8年ぶりである。届け出は同日午後5時に締め切られた。
坂井氏は再選決定後、事務所で支持者から拍手を受け、「前回の6人乱立の激戦を思い出した。市民の思いを受け止め、『リッチ・ローカル佐賀市』の実現に全力で取り組む」と決意を述べた。前回は自民党の支援が割れたが、今回は3党の相乗り推薦を受け、無投票での再選に至った。坂井氏は「政党や国に従わず、市民の幸せと市の発展を追求してきた結果、共鳴する人の輪が広がった」と語った。
公約と市政の重点課題
坂井氏は2期目の公約として、佐賀の自然や文化を活かし、人や企業を呼び込むことで人口減少時代の成長を目指すと訴えた。具体策として、以下の施策を掲げる。
- 新しい産業団地の整備
- 神野公園と市立図書館のリニューアル
- 中山間エリアの高速通信網整備
- 生後1カ月健診の導入
- ノリ養殖日本一復活に向けた支援
また、1期目に引き続き中核市移行を目指し、市外との人事交流による高度人材育成を進める。水害対策も重視し、佐賀城跡のお堀を調整池として活用する構想を進め、2期目では樋門操作の電動化などを計画する。
坂井氏の経歴とリーダーシップ
坂井氏は自民党衆院議員だった故・坂井隆憲氏の長男である。弁護士を経て、30代で国土交通省に入省し、街づくりや政策を学んだ。2021年、前市長の引退表明を受け、約2カ月後に市長選への立候補を表明した。「聞き上手」を自認し、「志は高く頭は低く、市民に身近で話しやすいリーダー」を目指す。市民との対話「まちトーク」を全校区で開催し、記者会見でも穏やかな語り口を貫く。
一方、佐賀空港の陸上自衛隊オスプレイ配備や九州新幹線西九州ルート整備など、世論を二分する問題では明確な賛否を避ける傾向がある。こうした姿勢は、山口祥義知事の率直な発言と対比され、メディアで取り上げられにくい面もあった。
中核市移行への挑戦
坂井氏が特に力を入れる中核市移行については、山口知事が「意義が見えない」と冷淡な姿勢を示している。これに対し、坂井氏は「市民サービスの充実や広域的な取り組みに重要」と強調し、知事の姿勢を変えるべく手腕が問われる。2期目では、批判を恐れず独自のカラーを打ち出すことが期待される。
市議選は45人が立候補
同日告示された佐賀市議選(定数36)には、現職27人、新人18人の計45人が立候補した。党派別内訳は自民14人、立憲民主4人、国民民主1人、公明4人、共産1人、参政1人、諸派1人、無所属19人である。投開票は10月19日に行われ、期日前投票は13~18日に市内9カ所、14~15日に佐賀大学で実施される。佐賀市富士町には移動期日前投票所も設置される。市選挙管理委員会によると、10月11日現在の選挙人名簿登録者数は18万7490人である。
市民の信任と今後の期待
無投票での再選は、坂井氏の4年間の市政が市民の信任を得た結果である。坂井氏は「敵味方ではなく、皆の話を聞き、知識や経験を尊重してきた」と述べ、市民との対話を重視する姿勢を強調した。2期目では、佐賀の課題解決に向けた具体的な成果と、リーダーとしての明確なビジョンが求められる。