2025年度税制改正大綱の与党案が明らかになり、20日に正式決定される見込みである。最大の焦点となっている所得税の非課税枠「年収103万円の壁」は、123万円に引き上げる方針が明記された。しかし、国民民主党が主張する178万円への引き上げが実現されない場合、2025年度予算案に反対する可能性が示唆されており、協議は継続される見通しだ。
与党案によると、所得税の控除額を20万円引き上げ、基礎控除と給与所得控除をそれぞれ10万円ずつ増加させる形で対応する。物価上昇を反映した措置であり、1995年以降初めての引き上げとなる。また、与党と国民民主党の幹事長間で合意された「178万円を目指して」という文言も大綱に盛り込まれた。
防衛増税は2026年度から段階的に実施
防衛力強化を目的とした増税について、法人税とたばこ税は2026年度から段階的に引き上げられる。法人税では新たに防衛特別法人税(仮称)が設けられ、税額に税率4%を付加する形となる。たばこ税も、加熱式たばこの税率を紙巻きたばこと統一し、2029年までに1本あたり計1.5円引き上げる方針である。
一方、所得税の増税時期は今回の大綱には明記されず、引き続き検討されることとなった。
子育て世帯や若者向けの税制優遇措置を延長
特定扶養控除の年収要件について、大学生などを扶養する親の税負担軽減を図るため、年収上限を103万円から150万円に引き上げる。また、児童手当の高校生までの拡充に伴い、高校生世代を持つ親への扶養控除縮小案は、公明党や国民民主党の反対を受け、1年間現行水準を維持する時限措置が取られる。
さらに、子育て世帯や若者夫婦を対象とした住宅ローン減税の優遇措置が2025年末まで1年間延長される。個人型確定拠出年金(iDeCo)や企業型確定拠出年金の税優遇も拡充され、拠出限度額の引き上げが行われる。
暗号資産への課税見直しを検討
将来的な課題として、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の取引に対する課税の見直しが検討項目に加えられた。政府は一定の暗号資産を「国民の資産形成に資する金融商品」と位置づけ、投資家保護のための法整備や取引業者への報告義務を前提とした課税制度の見直しを進めるとしている。
関係者の反応
自民党の森山幹事長は「税制改正大綱を決めることは予算編成上不可欠であり、3党合意を実現するためにも引き続き協議を進める」と述べた。また、公明党の西田幹事長は「控除額123万円からさらに178万円を目指す議論を継続する」との考えを示した。
一方、国民民主党の榛葉幹事長は「控除額引き上げが国民の生活を支える重要な施策である」と強調し、協議の継続を歓迎したものの、123万円のままでは予算案に賛成できないと指摘した。