衆議院予算委員会は30日、自民党派閥の政治資金問題を巡り、旧安倍派の会計責任者だった松本淳一郎元事務局長の参考人招致を議決した。野党の賛成多数で決定し、自民党は反対、公明党は退席した。衆院予算委が参考人招致を多数決で決めたのは1974年以来51年ぶりとなる。
参考人招致の経緯と与野党の対応
松本氏は政治資金規正法違反事件で有罪判決が確定している。野党は2025年度予算案の審議入りの前提として、松本氏の参考人招致を求めてきた。しかし、29日の理事懇談会でも与野党は折り合わず、立憲民主党の安住淳予算委員長が議決を決定した。
招致は2月10日ごろを想定しているが、参考人の出席は任意であるため、松本氏が拒否すれば実現しない可能性もある。安住氏は「松本氏には議決の重みを十分に自覚し、速やかに出頭いただき参考人質疑が行われるようご決断いただきたい」と述べた。
公明党の西田実仁幹事長は退席した理由について「多数決による民間人の参考人招致に対する反対の意思を明確にするため」と説明し、旧安倍派の政治資金問題の実態解明には反対しないとの立場を示した。
野党の攻勢と自民党の反発
今回の決定は、与党が過半数を割り込む衆院で野党が審議の主導権を握る動きの一環とみられる。自民党は参考人招致に反対し、与党筆頭理事を務める井上信治氏は「人権尊重や三権分立の観点からも招致すべきではない」と述べ、「数の力による議事運営は厳に慎んでいただきたい」と注文をつけた。
一方、立民の山井和則氏は「自民党が真相究明や再発防止に後ろ向きなのは残念」と述べ、公明党の退席についても「自民党と共同歩調をとって反対の意思表示をしなかったことは意味が大きい」と評価した。
今後の国会審議の行方
25年度予算案は31日に実質審議入りする予定であったが、今回の議決により日程がずれ込んだ。政府・与党は予算案を3月2日までに衆院通過させることを目指しているが、野党側は修正を視野に入れており、与党との攻防が続く見通しである。