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内閣府調査、女性の働き控えをデータで確認

女性に顕著な「年収調整」傾向

所得税が課税される基準「年収103万円の壁」を巡り、内閣府が民間ビッグデータを分析した結果、女性が勤務時間を減らして年収を103万円未満に抑える傾向が明らかになった。壁を意識した「働き控え」の実態がデータで裏付けられた形である。

国会での「壁」見直しと調査の背景

通常国会では、課税基準の「年収の壁」を103万円から160万円に引き上げる税制改正が成立している。今回の調査は改正前の基準である103万円を対象に、アルバイトなどの時給労働者における年収分布や就業調整を把握するために実施された。
分析には、給与計算代行サービス事業者が保有する匿名化データの一部(2015~2023年、約6万8000人分)が用いられた。

女性の年収分布に「急減の壁」

調査によると、女性の年収分布では103万円までは徐々に割合が増加する一方、103万円を超えると急激に減少する「年収の壁」が確認された。男性には同様の傾向はほとんど見られなかった。

時給上昇後も勤務時間を削減

さらに2021~2022年にかけて時給が増加した女性を対象に勤務時間の変化を調べたところ、2021年時点で年収100万~103万円未満だった619人のうち、翌年に勤務時間を減らした人は424人(68%)に上った。時給上昇分を相殺する形で、年収を壁の下に抑える行動が見られた。

配偶者手当が影響か

年収が103万円を超えても、超過分にしか所得税はかからず、手取りが減少することはない。それにもかかわらず働き控えが起きる背景には、企業の配偶者手当制度があるとみられる。調査によれば、配偶者の年収制限を103万円としている企業は約4割に上る。内閣府は、こうした制度が女性の就業行動に影響を与えていると分析している。