安全保障分野の協力深化へ
石破茂総理大臣は28日(日本時間同)、訪問先のベトナムでファム・ミン・チン首相とハノイの首相府で首脳会談を行った。両首脳は、安全保障分野での協力を一層進展させるため、外務・防衛当局間で新たに次官級協議を設け、年内に日本で初会合を開催することで一致した。
また、同志国に防衛装備品を無償供与する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の枠組みを活用した支援を行う方針も伝達した。日越両国は2023年11月に関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げしており、今回の会談を通じて安保協力の具体化を図る。
米関税措置への対応と自由貿易体制の重視
会談では、アメリカの関税措置やそれに対抗する中国の動きが世界経済や自由貿易体制に与える影響についても議論された。石破総理大臣は、多くの日本企業がベトナムに進出している現状を踏まえ、両国で緊密に対応していく意向を示した。両首脳は、自由で開放的かつ公正な貿易秩序を維持する重要性について認識を共有したとみられる。
東シナ海・南シナ海情勢でも協力確認
両首脳は、中国が海洋進出を強める東シナ海や南シナ海の情勢についても意見を交わし、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持と強化に向け、連携していくことで一致した。
また、北朝鮮による核・ミサイル開発やロシアとの軍事協力、軍政下にあるミャンマーの地震被害など、地域情勢についても協議が行われた。
経済分野での連携強化
経済分野では、インフラ整備、脱炭素化、防災対策、半導体分野における人材育成など、幅広い分野での連携強化で合意した。
共同記者発表 「新しい時代」を強調
首脳会談後に行われた共同記者発表で、石破総理大臣は「地政学的要衝に位置するベトナムとの関係強化は、地域の安定と繁栄に資するものであり、ともに『新しい時代』を歩んでいく」と述べた。
これに対し、チン首相は「ベトナムと日本の関係を新たな高みに引き上げ、新しい時代に移行することで一致した」とし、経済や安全保障の分野で引き続き連携を深める考えを示した。
「ホーチミン廟」を訪問し献花
石破総理大臣は、佳子夫人とともにハノイのバーディン広場を訪れ、ベトナムの建国の父ホー・チ・ミン主席をまつった「ホーチミン廟」で献花を行った。石破総理大臣は、静かに目を閉じて祈りをささげた。
「ホーチミン廟」への日本の総理大臣による献花は、最近では3年前の岸田総理大臣、5年前の菅総理大臣に続くものである。